いまさら聞けない「お・も・て・な・し」とは?教えて!
オリンピック招致の際に大きな話題となった「おもてなし」という言葉ですが、なんとなく意味を理解しているつもりでも、いざ説明を求められると言葉に詰まってしまう人も多いのではないでしょうか。では、英語のサービスとは違う日本人固有の感覚、「おもてなし」とは一体どういったものなのでしょうか。その語源や実態について詳しく解説します。
言葉上のサービスとおもてなしの違いとは?
英語のサービス(service)の語源はラテン語のセルヴィタス(servitus)で、「奴隷」という意味だそうです。つまりサービスとは、もともと「奴隷が主人に対して仕える」という言葉で、主従関係がはっきりとしています。
一方「おもてなし」にはそのような主従関係の背景はありません。「おもてなし」の語源は「もてなす」という動詞です。また「もてなす」は、「もて」と「なす」の二つに分けることができます。まず「もて」ですが、動詞の意味を強調する言葉になり、「なす」という言葉を強調しています。後半部分の「なす」ですが、こちらは今でも使われる「成す」という漢字を当てはめることができます。意味としては、「ある行為をする」とか「築き上げる」といった動作を表すものです。つまり「もて」と「なす」を足した「もてなす」は、「積極的(意識的)にある行為をする」という意味になります。更に尊敬の意を表す接頭語の「お」がついて名詞の「おもてなし」です。これにより「心づくしの歓待をする」という意味になります。「サービス」と「おもてなし」とでは、その語源からも違いがあるのですね。
接客の現場におけるサービスとおもてなしの違いとは?
ラテン語からきているサービスという言葉は、主人に仕える代わりに見返りがもらえるように、その背景には奉仕への対価の期待があります。これをホテルでの現場に置き換えてみましょう。サービスにはサービスを提供する側が自分たちのマニュアルやルールに沿って優遇や割引をすることでお客様に満足感を感じて頂き、今後も利用してもらおうという意図があります。つまりお客さまが求めていなくても行われるのがサービスです。ドアスタッフが恭しく車のドアを開けることや、ベルスタッフが荷物を部屋まで運ぶのは、典型的なサービスの形なのかもしれません。
一方「おもてなし」はお客さまが求めているであろうことを察して対応することを指します。ですので定型はなく、お客様ごとに対応が変わってきます。もちろんホテルにできることやできないことがありますが、最大限の心遣いをすることが「おもてなし」の精神と言えるでしょう。
ただ「サービス」と「おもてなし」は対極するものではなく、サービスを提供する際に「おもてなし」の心を持って対応することが、日本的なサービスの形になるのです。