ホテリエにとってのサービス料

各国の紙幣のイメージ

ホテルでの仕事は、単に物や場所を提供するだけでなく、宿泊する人に安全、安心、快適さを提供することであり、それらを保障するために様々な工夫を行っています。そのような幅広いサービスの対価としてサービス料は存在しています。
これならサービス料を支払うのも納得、と思えるサービスを提供するのは当然でしょう。

今回は、ホテリエ(ホテルで働く人)やホテリエを目指す人に、他の様々なサービス業で働く方々のお手本とされる存在を目指してほしいと思いを込めて、サービス料について深堀してみました。

サービス料の由来

日本ではチップ文化が定着しなかった為、代わりに考案されたのが、サービス料制度と言われています。日本の場合はサービス料が利用料金として請求されることが予め決まっています。

サービス料は、当初、チップの代理収受という考え方が基本でしたが、現実には、従業員に還元されることはなく、ホテルの収入の一部として定着しているようです。従業員に一定の給料を保証するという意味では時代に合わせた変化と言えるでしょう。

チップ文化の国では?

欧州、北米また欧州文化が強い国ではチップを支払う習慣があり、チップは、サービス業に従事する人たちの重要な収入源になっています。チップはそのまま従業員の収入になるのが一般的ですが、アメリカではチップ文化が一部システム化されているようです。

例えばウェイター、ウェイトレス、ベルマン、ドアマンといった、チップを多く受け取る部署の従業員は、その分お給料が低く設定されており、彼らの主たる収入はチップということになります。職場ではチップを従業員に還元しなければならないため、一度すべて集められ、勤続年数の長い順に多く分けられ、全体として不公平さが出ないように設計されているようです。逆に、ハウスキーピングのようにお客様と接する事がなく、あまりチップが受け取れない部署は、給料は高めに設定されており、インセンティブなど別な形での支給があるようです。

キャッシュレス社会のチップ制度はどうなる?

前述以外にも、チップの由来には諸説ありますが日本のサービス料の由来も様々あります。由来はともかくサービス料は日本独自の料金制度であることは間違いないようです。現在、キャッシュレス後進国と言われる日本が他国に先んじてサービス料を利用料金として請求する仕組みを作ったことは先見の明があったといえます。

米国の都市部では、防犯効果が高まるとのことで小売店でも現金を取り扱わない店舗が増えています。とあるニューヨークのテイクアウト専門店ではキャッシュレス精算機のタッチパネルに15%、20%、25%とチップを自分で選択して商品と同時精算するシステムが登場したそうです。もちろんNo tipというボタンや10%と自分で設定するボタンもあるそうです。海外で生活したことのない私はテイクアウトのお店なら迷わずNo tipのボタンを押してしまいそうです。

サービス料はどのように計算されるの?

サービス料の金額設定は、レストランやホテルによりますが、基本料金の10~15パーセント程度が目安です。

サービス料の対象となる利用料金(ここでは宿泊料金、飲食料金とする)の消費税は、次の計算式で算出します。
(利用料金+サービス料)×消費税率=消費税

サービス料10%、消費税10%として次の条件で支払い総額を算出してみましょう。

室料10,000円(消費税別)のシングルルームに宿泊し1,500円(消費税別)の朝食を利用しました。

  1.  利用料金とサービス料の合計:11,500円+1,150円=12,650円
  2.  消費税:12,650円×10%=1,265円
  3.  支払総額:13,915円

支払総額=11,500×1.1×1.1=11,500×1.21=13,915円
これにより利用料×1.21という計算式が成り立ちます。
※(サービス料率10%・消費税率10%の場合)

支払いの義務

サービス料は、利用料金の1つです。
サービス料は施設側が決めるものであり、利用客がサービスに満足できなかったからと言って、サービス料の支払いを拒否する事は出来ません。利用客がホテルの基本料金しか確認せず、サービス料の規定について見落としていた場合にも支払いの義務はあります。事前にホテルに連絡して確認するか、ホームページや予約サイトのどこかに記載がないか確認しておくといいでしょう。

事前情報に明らかな虚偽があるなどホテル側の請求自体が妥当でない場合は別として、基本的にはサービス料だけが免除されるということは無いのです。

まとめ

私がホテルへ入社した新入社員の頃、印象に残っている事があります。

合宿の研修での講義中に、大勢の新入社員の中で私が指名され、質問を受けました。「お給料は、誰からいただきますか?」という質問でした。私は、当然のように「会社からです。」と回答しました。しかし、それは誤った回答でした。
お給料の原資はお客様からのホテル利用料や商品、サービス等の対価ですから、お給料は「お客様からいただいている。」と言う回答が正解でした。サービス料は、現実には、従業員に還元されることはなく、ホテルの収入の一部としての認識が定着していますが、お給料は、お客様からいただいたサービス料を含めたホテルの収入から支払われているという事になります。

新入社員の頃、目に見えないサービスやおもてなしが、お客様満足度に繋がり、ホテルの収入やお給料にも反映されるという事を教えていただきました。そして、フロントに配属された私は、より良いサービスを常に心がけるようになって行きました。サービスに満足されたお客様は、また利用したいと思うのも当然ですし、その口コミにより他のお客様も利用する。

自分の評価はそのままホテルの評価につながる為、やりがいもありますね。

冒頭で述べたように、ホテリエとして働く皆さんには、サービスへの対価をいただくプロとして、他の様々なサービス業で働く方々のお手本とされる存在を目指してほしいと思います。

この記事を書いたのは

富高 亜矢子

私鉄系シティホテルチェーンでのフロント勤務を経て本社、海外営業部に従事。
現在は株式会社INGエンタープライズにてウェブサイト(ホテル求人ドットコム)の運営を担当。


 

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