制服で見極める「働きたいホテル」

ホテリエのイメージは?と聞かれて、プロフェッショナルな装いの制服をスマートに着こなしサービスを提供している姿を思い浮かべる人は少なくないでしょう。

ホテルの制服

ホテルは他業界に比べ圧倒的に職種が多い職業で、部署毎に制服が違うだけでなく、同じ部署でも様々な業務があるので、機能に合わせ多くの種類の制服がある業界です。そして、日本のように季節による温度差の大きい国では、夏服と冬服が支給され、職種によっては日中と夜で制服の色が変わるところもあるので、ホテルの制服は見ているだけでも楽しめてしまうだけでなく、着用する社員としても楽しみの一つであり、素敵な制服はホテリエが憧れの職業となる要因でもあります。又、制服に袖を通すと仕事のスイッチが入るといった効果もあります。

因みに業界別の「好きな制服ランキング」では男性がパイロット、女性がCAというのは根強く変わらないようですが、やはり制服は求職者にとって魅力ある要素の一つであるようです。

ホテルタイプ別にみると、風格を重んじるクラシックホテルでは、格式高い、ゆったりとした雰囲気で、100年以上も変わらない伝統的な制服が着られていることもあります。そのようなホテルでは、上品な作法で行き届いたサービスを提供する傾向があります。

和の心で接客する和風旅館では、日本の伝統である着物や作務衣で統一され、ビジネスホテルは、わりとフォーマルなスタイルでテキパキ動けるような制服、リゾートホテルはカジュアルな傾向があり特に女性の制服は露出部分が多い制服もあり、料飲部門ではトロピカルなデザインの制服まであります。

一方、近年増えているライフスタイルホテルのように、アップテンポのBGMを流しカジュアルな雰囲気の中、オリジナルスタイルのサービスを提供するところでは、特定のコンセプトに基づいた斬新なデザインの制服が見られる傾向にあります。エースホテル京都やメズム東京、オートグラフコレクションなどがそれにあたります。もともとホテリエにとって、清潔感や爽やかな印象はサービスの一環であるのは当然ですが、お客様を不快な気持ちにさせないために、お客様より高価なもの、派手なものは身につけない、という慎ましさがサービスの基調にありました。メガネを禁止とするホテル・旅館もあるぐらい身だしなみを重んじる職業であり、クラシックホテルでは制服だけでなく、髪型、髪色、化粧、アクセサリー、メガネ、ネイル、香水などの多くの項目で細かな規則があり、統一感が重要でしたが、ライフスタイルホテルなどは、この辺の規則があまり細かくなく、むしろコンセプトとしてデザイン性のあるものや、多様性として個性の表現を推奨するようなところもあります。

ホテルの制服事情

以上のように、ホテルの制服は印象における機能、そして作業するための動き易さや耐久性、調理では特に衛生面に重点が置かれていますが、制服は社員にとっての福利厚生という視点では、毎日着ていく服を選ばなくて良い、というありがたい特典でもあります。

人によっては私服を着ていく方が楽しみという方もいるかもしれませんが、毎日選ぶのは面倒という方も多いのではないでしょうか。ホテルでは多くの部署で一人に対し2セット以上の制服貸与と一定のクリーニングが認められることが多いです。大規模ホテルとなれば、制服のクリーニングの担当である清掃部署内に先が見渡せないほど大量に、ハンガーにかかった社員の制服が並んでおり、ボタンの取り付けや染み抜きなどを無料でやってくれたりするのはありがたいシステムです。

しかし、マネジメントスタッフや営業スタッフには制服が支給されることあまり無く、他の部署でもワイシャツや靴は自分で用意することが一般的となっています。お客様に見えないバックヤードでの体力仕事が地味に多いこの業界では、作業中にスーツのジャケットのボタンが取れることは日常茶飯事で、時にスーツパンツが破けてしまったり、椅子や演台を運んでいる時にその什器のかどで革靴が切れてしまったりする度、ホテルで着るものにはあまりお金をかけるのは止めよう、と決意するものです。一方、制服組は、残念ながら、制服が1セットしか支給されず、制服の担当者に「まだ準備している」、と言いくるめられ、何年も1セットで凌ぐことも稀にありますが、それなりの期間勤続しているのであれば、担当者に「お客様に汗臭い、と言われたのでクリーニング中に着るための2セット目を支給してもらえませんか」などと賢くおねがいしてみても良いのではないでしょうか。

新しい制服のカタチ

このように特典ととらえられる制服の良い面もありますが、最近ではホテルの制服や身だしなみについて、従来の規則に息苦しさを感じ、もっと「自分らしさ」を求める社員も多くなっています。カチッとしたザ・ホテルのような制服に憧れを抱きこの業界を目指す方も多いですが、自分の体型に合う装いを求めることができ、ヘアカラーやネイルなどでちょっとしたおしゃれを楽しめる職場が選ばれる傾向にあります。ホテルでも最近はコンセプトによっては、パーマをかけたレセプショニストもよく目にします。ノータイの導入も進んでおり、社員だけでなく、お客様からも涼しい印象に好感が持たれ、サステナブルな社会の実現にもつながっています。学生時代に学校の身だしなみなどの校則に馴染めなかった方は、毎日着ることになる制服も勤め先選びのポイントとして調べてみた方が良いかもしれません。

まとめ

制服は、そのホテルや会社の理念、カラーが反映されやすいものの一つです。自分たちが表現したい思いや、お客様に感じてもらいたいことが如実に表れるのが制服であると言えます。したがって、自分が勤めてみたいホテル選びの一つの要素として参考にしてみてください。伝統あるホテルで、長年受け継がれてきた制服を着て、業界の歴史や洗練されたホテルサービスを身につけるのも良いでしょうし、新しいニーズに柔軟に適応したホテルで、デザイン、機能の多様化する制服を着て、新たな価値の創出を目指すのか。自分に合ったホテル選びの参考として、制服にも目を向けてみると良いでしょう。

この記事を書いたのは

遠藤 洋

創価大学 経済学部 経済学科 卒
事業創造大学院大学 経営管理修士(専門職) MBA 修了

シャングリラグループ トレーダースホテル マニラ、アコーグループ ソフィテル マニラ、鹿島建設 海外開発部門ホテル運営監修及びホテルプロパティーマネジメントで改修プロジェクトを担当、帰国後、新潟のシティホテルで改修プロジェクトを担当。
現在、ホテルコンサルタントチームhicee代表を務める。


  https://www.hicee-hotel.com/

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