ホテル業界とオンライントラベルエージェントの今後の関係はどうなる?教えて!

インターネットが普及したことにより世の中の仕組みがこの10数年で大きく変わってきています。世間の動向や最新情報は新聞を購読しなくてもインターネットで充分知ることができますし、日常品の買い物もインターネット経由で購入することが当たり前になりました。ホテル業界もその流れの中で、主に宿泊の販売形態が大きく変わりました。インターネットが普及する前はホテルや旅館の情報を個人では知りようがなく、旅行会社を通じて予約をすることが一般的でした。ただ現在、ホテルの宿泊予約については、オンライントラベルエージェント(以降OTAとする)を利用することが主流になっていることは皆さまご存知の通りです。今回はホテル業界と今後も深く関わりが考えられるOTAについて理解を深めていきたいと思います。

日本のオンライントラベルエージェントのあゆみ

今から24年前の1996年、世の中にインターネットがようやく浸透し始めた頃、日立造船コンピュータ(現・NTTデータエンジニアリングシステムズ)が、今後はインターネットを通じての販売システムが伸びると見越して、日本で初めてインターネットでのホテル予約サイト「ホテルの窓口」をオープンしました。オープン当初は認知度も低かったため、ひと月10数件ほどの取り扱いだったそうですが、その後のインターネットの普及に伴い、急激な勢いで契約施設・会員数が伸びました。またオープンしてしばらくの契約施設はビジネスホテルが中心でしたが、徐々に観光客向けに地方のホテルや旅館などにも契約の範囲を広げていきました。一方、大手旅行会社各社ですが、オンライン販売は自社の店舗販売と競合する形になることから、本格的にオンラインサイト運営に乗り出せないジレンマに陥っていました。その状況を尻目に「ホテルの窓口」は瞬く間に日本最大の宿泊予約サイトになりました。観光客向けの予約も手掛けるようになったことで1999年に「ホテルの窓口」から「旅の窓口」へ改称しましたが、2003年には楽天に買収され、現在の「楽天トラベル」として再スタートを切りました。インターネットを利用した予約サイトは参入障壁が低いため、その後は続々と各社の参入が相次ぎましたが、特色を持たないサイトは利用者が伸びず、現在は実質的に数社の寡占状況になっています。このオンライン宿泊予約は世界的にも主流になっており、2019年時点でオンラインによる販売比率はアメリカおよび欧米では50%を超えています

オンライン宿泊予約サイトの情勢

日本のOTAは現在楽天トラベル」「じゃらんnet」「るるぶトラベル」が3といわれています。日本中の宿泊施設がほぼ網羅されており、またサイトを利用するとそれぞれポイントが付与されるため、ほかのサイトを使う理由が少ないことなどが理由で市場の寡占化が進みました。その中にあって高級宿泊施設にターゲットを絞った「一休.com」や「Relux」は一定の地位を確立しています。ただこの数年で海外のOTAが日本に続々進出してきました。「Expedia」と「Hotels.com」というサイトを擁するエクスペディアグループと「Booking.com」と「agoda」というサイトを擁するプライスライングループが双璧です。ともに数十か国の言語に対応し200か国前後の国と地域の数十万もの宿泊施設との契約があるため、日本のOTAと比べて圧倒的な集客力を誇り、ノウハウが豊富でサービスも洗練されています。これから日本のOTAとの競争が活発化していくことが予想されます。
また価格やサービスを比較するサイト(メタサーチサイト)は他業界でもありますが、オンライン宿泊予約サイトでも「ホテルの窓口」がオープンした翌年の1997年には「トラベルコちゃん」がオープンし、ゆるぎない地位を築いています。また旅ナビゲーターによる旅行ガイドを発信していることで人気を博し「Travel.jp」が国内最大級のメタサーチサイトとなっています。この分野にも世界規模で展開する「tripadvisor」や「trivago」とういメタサーチサイトが進出をしてきていますが、国内旅行を考えている人は国内メタサーチサイトを利用し、海外旅行を考えている人は海外メタサーチサイトを利用するなどの棲み分けができてくると考えられます。

ホテル業界とオンライントラベルエージェントの今後の関わりについて

現在日本における、宿泊施設のオンライン販売比率は40%ほどですが、業態によって大きく違いがあります。ビジネスホテルでは60%、シティホテル・リゾートホテルでは30%ほど、旅館に関しては20%ほどになっています。OTAは頻繁に料金改定やコメント返信をする必要がありますが、規模の小さいホテルや旅館やではOTA対応を兼任でこなすスタッフの確保が難しく、またOTAへのコミッションも負担になっていることなどが加盟率の低さに繋がっています。
現在、大都市や有名観光地の宿泊施設は高稼働率が続いていますが、それ以外の地域ではまだまだ活況とは言えません。今後OTAでの販売比率は上がっていくことはあっても下がることはないでしょう。ホテル業界は国内OTAを利用し日本人客を確保するとともに、海外OTAに目を向け訪日外国人を積極的に受け入れることも必要です。日本政府は2020年について年間4000万人のインバウンドを目標に掲げました。4000万人もの訪日外国人を有名観光地だけでは当然受け入れ切れず、政府はその他の観光地にも外国人が足を運ぶようにプロモーションやインフラ整備などの手立てを順次講じています。海外OTAは国内OTAよりコミッションが高い傾向ですが、数十カ国の言語対応しているため、東南アジアや英語圏の国のみならず、他の地域(中東、南アメリカ、東欧など)からも予約が入ることが予想され、バカンスでの来日ならば長期滞在も見込めます。海外の富裕層が長期滞在して頂けるのならホテルにとって非常に魅力的なゲストですので、海外OTAにコミッションを若干多く支払っても十分な価値があるでしょう。もちろん受け入れるホテル側も準備が必要になります。第一に「百聞は一見に如かず」であるため、日本の文化に疎い外国人にも直観的に伝わるように、OTA向けのサイトにはホテルや旅館の特徴をよく表した写真を用意すること。次にシンプルな料金体系です。外国人に色々なプランを提示してもその違いが解からず、面倒くさいとスルーされてしまう可能性があります。また海外の休暇の取り方の習慣も考慮し、半年や1年先の予約も積極的に受け入れることなどです。

日本の大手OTA各社はGAFAと言われるGoogleapplefacebook、 Amazon などがOTA業界に進出してくることを警戒していましたが、ついに2019年5月よりGoogleが「Google Travel」」というホテル・旅行券などの比較サイトを開始しました。検索サイトとして圧倒的なシェアを誇るGoogleが進出してきたことで、OTA各社は対抗手段も検討しており、ホテル業界は今後も変化をし続けるOTA業界の動向を常にウォッチして最善の選択をしていく必要があります。

この記事を書いたのは

奥泉 剛

大手ホテルチェーンの都内シティホテルにて、法人宴会セールスに従事。その後、派遣業界に身を投じ事務系や料飲系派遣の営業として勤務。現在は(株)INGにて転職相談責任者としてコーディネート業務


 

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