ブラック企業とホワイト企業の見分け方はあるの?教えて!【前編】
ブラック企業の実名公表
厚生労働省は2020年2月28日、長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで送検された企業の実名を公表しました。
公表は2019年2月から2020年1月にかけて送検された380社分の違反内容で「労働基準関係法令違反に係る公表事案」に集約したものです。この資料は47都道府県別にリストアップされ「企業・事業場名称、所在地、公表日、違反法条、事案概要、送検年月日」が記載されています。リスト内容は月一回更新され公表した日から概ね一年間、厚生労働省の公式サイトに掲載されます。「公表しても根本的な解決には至らない」など、実名公表に否定的な意見もあるようですが社会全体で過労死ゼロを目指す取組強化の一つとして評価されるべきでしょう。
ブラック企業の特徴と見分け方
さて、本題の「ブラック企業とホワイト企業の見分け方」に戻りましょう。まずはブラック企業の特徴をお話しします。一般的には労働法の基本を逸脱するような劣悪な労働環境や過酷な労働を強いられる企業の事をブラック企業と総称します。このような企業では長時間労働や違法な時間外労働は勿論、タイムカードの改ざんなどにより残業を隠ぺいし支給すべき手当を減額するような横暴経営が常態化しています。このような企業は当然管轄の労働基準監督署からも目をつけられ指導・勧告・助言などの是正が行われていますが、従業員を大切にするという基本理念が欠如しているため根本的な解決には至りません。
このような企業では「従業員は使い捨て。退職したら新たに採用して穴埋めするだけ」と考えています。では、このような企業に就職しないように注意するにはどんな準備をすればいいのでしょうか。ブラック企業の求人募集要項ほど好条件が並び、一見優良そうにみえる魅力的な内容になっています。実態とは違う好待遇の求人広告を掲載して求職者を募る「虚偽求人・偽装求人」が社会的な問題になっており訴訟問題に発展する事例が発生しています。
この「虚偽求人・偽装求人」については求職者自身が応募する前に見抜くことは難しいでしょう。但し、面接などで採用担当者や経営者と対面する機会があれば見抜く方法はあります。
ブラック企業は採用面接で見抜く
求職者は人生の転機として重大な決断を持って応募しています。従業員を大切にする企業風土がある場合は入社後にお互いが「こんなはずではなかった」と思わぬよう面接にはしっかり時間をかけて理解を深めていきます。
前述の通り、ブラック企業は、社員を使い捨ての道具として見ているので、面接は数十分で切り上げ、その場で即日採用を伝え求職者に考える猶予を与えません。また、別の企業では面接中に壮大な夢物語を語ったかと思えば、「やる気」「熱意」といった精神論を強調し「頑張れば直ぐに昇給し昇格できる」などと口説き文句を多用します。更に、必要以上に精神論を語る場合はセクハラ・パワハラ・モラハラなどの「ハラスメント」が職場に潜在化している可能性があります。
他にも注意すべき採用面接の事例を挙げてみます。職務内容に関する具体的な説明もなく終始和やかな雑談形式で進む場合も要注意です。誰でもいいから早く入社してもらい穴埋め作業に就かせるための対応であるとも取れます。逆にストレス耐性を見極めるために面接官が敢えて答えにくい意地悪な質問を畳みかける圧迫面接は最終面接にこそ行われる場合がありますが、採否の見極めには有効な手段とはいえません。
面接官の資質、企業体質が問われる面接
次は面接官の資質や企業体質が問われるような実際にあった最悪のケースです。面接当日、約束の時間に担当の面接官が不在で延期となったケース。数時間待された上にお詫びの言葉もないまま面接が開始されたケース。終始やる気のない横柄な態度で面接の最後に「不採用の場合は連絡をしません」といわれ本当になんの連絡もなかったケース。遠方より交通費と時間を費やして面接に臨んだ結果、冒頭で希望職種の変更を求められた上に暫くはアルバイトで雇用し仕事ぶりをみたいと告げられたケース。
このようなケースがいくつか重複する場合はブラック企業であると考えていいでしょう。求職者に対して誠意が見られない企業は顧客に対しても同様に不誠実で不愉快な対応を行っている可能性があります。
採用活動には売り手も買い手もありません。常に対等な立ち位置でなければなりません。自社の都合ばかりを優先するような不誠実な企業に入社してしまった場合は劣悪な労働観環境で過酷な労働を強いられることになるのです。
次回は日本的雇用システムとホワイト企業の労務管理について検証してみたいと思います。