新米営業マンが初めて受注した宴会での出来事

筆者があるホテルの営業マンから伺ったエピソードをご紹介いたします。
ホテルの営業の大変さや面白みが臨場感を持って伝わってきますよ。

今のホテルに入社し丸2年はホテル部門のフロントとして日々を過ごしていましたが、他業界での営業経験を買われ、3年目の秋に欠員補充のため、営業部販売課に異動となりました。 

異動して早々、初めて獲得した案件は、時期的には少し早めの大きな忘年会のご依頼でした。実はこのお客様は前年までは別のホテルをご利用されていました。ある筋から、「例年より出席人数が増えてそれまで利用していた施設では入らないらしい」という情報を聞きつけ、自分のホテルの利点を猛烈にアピールして受注に漕ぎつけました。

幹事の方は実質会社を取り仕切る取締役で、かなり体格も良く、何もしてなくてもうっかり謝ってしまいそうなくらい強面の方でした。

最初の打ち合わせが始まった直後は、ちょっと腰が引けてましたが、『気後れしたら負ける』と思いなおし、正面からぶつかっていこうと気合を入れました。

話しを進めているうちに、その方の『1年間頑張ってくれた社員に対する労いと熱い感謝の想い』に触れ、何とかこの宴会を成功させてあげたい気持ちで一杯になりました。

さらに、ちょうどその会社の周年も重なり忘年会と一緒に盛大にやりたいという意向も知りました。

大体のお客様は最初の打合せで『ああしたい、こうしたい』との要望があるのが普通ですが、こちらのお客様は『君にすべて任せる!』のひとこと。『こりゃあ自分の持てる力をフルに使わないとエライ事になるぞ』と帰りの電車内で青ざめたのを昨日の事の様に覚えています。

最初の打ち合わせから開催まで1ヶ月半といささか厳しいタイミングでしたので、それからは大急ぎで全体的な開催スケジュールの提案から始まり、料理の形式やメニュー、飲み物の種類。お土産やコンパニオンの手配、司会者の選定や席札、吊り看板の文言や席順に至るまで決めました。

『君にすべて任せる』と言ったハズでしたが、その後いろいろ注文がありました。『こんなボリュームで料理は足りるのか?試食をさせろ❗』『料理の写真を見せろ』『これだけ大規模に使うのだから料理はサービスしてくれるんだろうな?サービスする料理と飲み物を書面にして報告してくれ』さらに、手配した司会者との打合せの際に本人を目の前にして『写真と実物は随分違うんだな?』なんていうのもありました。穴があったら入りたかったです。

そのなかでも『勘弁してよ!」』と思った事が1つだけありました。

それはいよいよ当日を完璧な状態で迎え『さぁ、来い❗』と息巻いて幹事さんをお迎えさせて頂いた際の開口一番でした。『乾杯後、君に10分あげるから出席している皆さんに今日のお勧め料理と飲み物の説明を頼むよ』と軽くひとこと。当然断れるはずも無く、当日だと料理長にも説明も頼めず、あわてて料理の詳細を調べてカンペを作りました。なんとかカミながらも説明しましたが、あんな冷や汗の出る思いはもう二度とごめんです。

ただ宴会は順調に進み大成功に終わりました。(と自分では思いました。)

宴会が終了して、しばらくやり切った達成感にひたっていましたが、最後に幹事さんにすごい勢いで呼びつけられました。

『怒られるのか?いや殴られるのか?』と覚悟するくらいものすごい大きな声。おずおずと近づき構えていたら『よくやってくれた!完璧だよ!』と万力で締め付けたかのようなものすごい握手。手が砕けたかと思うくらいすごい握力でした。嬉しさと痛さとどっちだかわからない感じでしたが一瞬涙が出そうになりました。

その後7年以上、営業続けていますが、いま思うとこの宴会は他の宴会の10倍は疲れましたが、10倍の喜びと達成感があったと思い返されます。最初に受注した宴会がこちらだったので「営業ってこんな楽しいものなんだ」と思えました。非常にラッキーでした。

今でもこちらの忘年会は毎年ご利用頂き、まさしく全面的に任せて頂いております。

この記事を書いたのは

寄稿記事 

この記事は寄稿頂いた文章をINGにて編集し、掲載しています。


 

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