レストランスタッフが知っておくべき宗教のタブーは?教えて!
現在、年々訪日外国人が増えていますが、中国・韓国・台湾を中心としたアジア諸国が大多数になっています。しかし2020年の東京五輪をきっかけとして、今後は世界各国の外国人が訪日されることが予想されています。受け入れる日本としては、今まであまり気にかけてこなかった世界の宗教についても理解を深め、適切に対応していく必要があるでしょう。今回はその中でも食事を中心にタブーが厳しい宗教をピックアップしましたので、参考にして欲しいと思います。
イスラム教について
イスラム教徒のことをムスリムと言いますが、ムスリムは世界で13億人ほどいるとされています。イスラム教には主に食品に関する取り決めとしてイスラム法で合法(許されるもの)とされる「ハラール(ハラル)」があります。逆にイスラム法で禁じられているものは「ハラーム(ノンハラール)」と呼びます。ムスリム以外がハラールを全て覚えるのはなかなか難しいので、ハラーム(禁じられているもの)以外がハラールと認識すれば良いようです。ハラームで代表的なものをいくつかご案内します。まず皆さんが思い浮かべるのは豚肉を食することが禁じられていることではないでしょうか?また豚肉そのものでなくても、ポークエキスや豚脂なども口にすることはできません。更にハラールとされる動物の肉でも、イスラムの教えに則った方法で加工処理をされていない場合はハラームとみなされますので、単純に豚以外の肉だから問題ないということにはなりません。またイスラム法で不浄なものを「ナジス」と言いますがその中に「アルコールを含む食品及び飲料」が含まれます。ムスリムにはアルコール類の提供はできないということになります。厳密にいえば醤油や味噌も発酵過程でアルコール分が醸造されますが、そこについては色々見解が分かれるようです。イスラム文化圏を出てしまうと、ムスリムでも目の前の食品がハラールかハラームか判別がつきにくくなっているため、最近は専門家がハラールであることを保証する「ハラル認証」という制度が普及し、日本でも15以上の認証機関があります。
ユダヤ教について
ユダヤ教の起源は紀元前2000年頃とされ、キリスト教やイスラム教もこのユダヤ教から分かれていった歴史があります。そのためユダヤ教にも食に関する戒律があります。食べても良い食物の規定を「カシュルート」と言いますが、特に肉類についての規定が多いようです。食べても良い主なものを上げますと、反芻動物(食物を胃で部分消化したあと、再び口に戻して咀嚼することを繰り返しながら消化する食べ方する動物)のうち、ひづめが完全に分かれているもの(牛、羊、山羊、鹿、カモシカなど)、海や川の生き物のうちヒレ・ウロコのあるもの(魚など)、鳥類のうち、食べてはならないものを除いたもの(鳩、鴨、鶏など)になります。イスラム教と同じく豚肉は不浄なものとして食してはいけません。また水中に棲む生き物のうち、ヒレやウロコのないのもとして、タコやイカ、エビや貝類などは食することができません。ほかに特徴的な規定として乳製品と肉類を同時に使ってはならないというものがあり、シチューなどの料理は勿論のこと、ミルクと一緒に肉製品を食べることもできないようです。植物系やアルコールについては特に規定はありません。その他にユダヤ教の戒律で有名なのが「安息日」でしょう。金曜日の日没から土曜日の日没までは何もしてはならないと定められています。一般の労働は勿論のこと家事なども該当し、旅行や車の運転もダメだそうです。人命救助などを行っても非難されることがあるといいます。ホテルの接客上としても知識として覚えておくとよいでしょう。
ヒンドゥー教について
インドとネパールを中心に9億人ほどの信者がいます。信者数でいうとキリスト教、イスラム教に次いで世界3番目になります。ヒンドゥー教は不殺生を旨とし、菜食主義者が多く、牛は崇拝の対象となっているため絶対に食べません。但し牛乳や乳製品はよく食されています。イスラム教やユダヤ教と同じく豚は不浄な生き物としてあまり食べられず、鶏や羊が好まれて食べられています。ヒンドゥー教の特徴として有名なのがカースト制度ですが、高位のカーストや社会的地位の高い人ほど肉食を避ける傾向にあり、人によっては、一切の肉、魚、卵、アルコールを摂取しません。カーストについては1950年にインド憲法で禁止されましたが、依然根強く残っているようです。
世界には数え切れないほどの宗教があり、それぞれに戒律が存在していますが、全てを把握することは現実的に難しいと思います。ただホテルなど外国人を受け入れる接客業に従事している方々は、少なくとも今回取り上げた3つの宗教のタブーについては、しっかり頭に入れておく必要があるでしょう。