ある野球少年団の納会の出来事。バンケット営業の失敗談。

かつてホテルの営業を経験した方から伺ったエピソードをご案内します。
真摯に対応することが大切なのですね。

私は学校を卒業してから、ずっと地元の老舗和菓子店で働いておりましたが、ひょんなきっかけから40代後半にホテル業界に転職することになりました。全く経験のない業界でしたので、周りからは多くの反対を受けましたが、本人の中では「やっていける」という根拠のない自信がありました。なぜなら、それまで長年培った接客のノウハウがあったからです。 ホテルに入社して配属された部署はバンケット営業でした。宴会場を時間貸しする仕事です。バンケット営業をする中で記憶に残っているひとつのエピソードをご案内いたします。

私の受け持っている少年野球チームの納会のことです。このチームは全国大会にも出場するような強豪チームで、毎年私の勤めているホテルで納会を開いていただいていました。チームのオーナーは地域でちょっと有名な気難しい方でしたが、なぜか私は妙に気に入られていました。今思えば、そのことが私の気持ちに緩みを引き起こしたのかもしれません。事件のあったこの年、幹事様と打ち合わせをしましたが、毎年のことなので確認程度にあっさりと終えて、納会当日を迎えていました。

長年ご利用を頂いている納会ですので、担当営業としては目に見えたサービスをしようと思い、料理長にお願いをして予算以上の料理を出してもらいました。実際、和やかに会は進行していき、「うまくいったな」と私はひとり満足の笑みを浮かべていました。納会が終了すると、奥の席に座っていたオーナーから手招きをされたので「何かお礼でも言われるのかな?」とニコニコしながら近づいていくと、突然「なんだこの寿司は!」と大声で一喝され、握り寿司が乗った皿を目の前に突き出されました。なんのことかワケもわからず呆然としていると、さらにひと言「パサパサに乾いているじゃないか!」と、そこでようやくお怒りの意味が分かりました。私はすぐにお詫びしましたお怒りは収まる様子はありませんでした。

後日、お宅に伺い改めてお詫びを申し上げました。その頃にはオーナーのお怒りも解け、ホテルに対してお怒りの理由を伺うことができました。「生ものである寿司は時間が経てば、乾くのは仕方ないが、そのようにならない努力を少しでもしたのか?」とのことでした。確かに毎年のこととタカをくくって、ロクに打ち合わせもせず、当然細かい配慮もないままに当日を迎えてしまっていた実状を思い返し深く反省しました。よく打ち合わせをしていれば、この年の納会は例年よりも乾杯前の挨拶や催しが多いことに気づき、料理を出すタイミングを遅らせる指示を出せたと思います。

このことから、毎年の案件でも初めての宴会のつもりで一からの打ち合わせする大事さを学びました。また人の話をよく聞き全方向にアンテナを張ることを営業として一番大切にしようと心に決めました。些細な話を聞きもらさず、ちょっとしたことにも気に留める心遣いということです。

その時のオーナーの怒りようから、もう二度と納会のご利用をして頂けないと思っておりましたが、その後も何度かこの少年野球チームの試合の応援に行くなど誠意を伝えたところ、翌年もご利用頂けることになり、オーナーを始め列席の皆様にも大変ご満足を頂き、納会を終えることができました。お陰様で今に至るまで毎年ご利用を頂いております。

私は一度失敗をしても、その後の対応いかんでは逆により深い信頼を頂けるという貴重な体験をいたしました。これからホテル業界を目指す方々は、人と接することの楽しさや奥深さを感じ取って欲しいと思います。

この記事を書いたのは

寄稿記事 

この記事は寄稿頂いた文章をINGにて編集し、掲載しています。


 

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