海外で当たり前のチップ制度とは?教えて!
海外を旅行したことのある方は、日本に馴染みのないチップ制度に戸惑われた方も多いと思います。チップ制度(習慣)とはご存知のようにアメリカをはじめ、欧米や東南アジアなど多くの国にある習慣で、サービスを提供してくれたスタッフに対して正規料金とは別に支払われる、日本でいうところの「心づけ(少額の現金)」になります。日本にはこの習慣がないにも関わらず、質の高いサービスが提供されることに海外からの訪日客は驚いています。チップとはどのようにして生まれたのでしょうか?そして、なぜ日本には根付かなかったのでしょうか?さらに、これからのチップ制度のことも探っていきたいと思います。
チップ制度の始まりと現在
チップの起源は諸説ありますが18世紀のヨーロッパにあるとされており、ロンドンのパブで早くお酒を持ってきて欲しい人が「To Insure Promptness」(必ず早くやってもらえるように/頭文字をとってTIP)と書かれた箱にお金を入れていたことがはじまりとする説が有力ではあります。ただ同じような時期にフランスでは「pourboire」、ドイツでは「trinkgeld」といったチップに似た習慣がありました。いずれにしてもチップは良い(早い)サービスを受けたことへの感謝の形と言えます。その行為がサービススタッフのモチベーションとスキルの向上に繋がっていく好循環になったため、次第にこの習慣が飲食店だけではなくホテルや床屋、さらにはタクシーなどへ広がりました。また、欧米のみならず当時はまだ欧米各国の植民地だった東南アジアの国々にも根付いていきました。しかしながらこの制度は形骸化しつつあり、現在のホテルや飲食店では、お客様からチップをいただけることを前提にスタッフの給与が低く設定されているのが一般的です。スタッフはチップを受け取ることが当たり前で、そこにはモチベーションを向上させる作用は少なくなってきています。
日本にはなぜチップ制度がない?
明治以降、日本に欧米文化が入ってくる中でチップの文化も輸入されてきました。しかしながら日本は古くから個人主義ではなく集団主義であるため、個人的に報酬を受け取ることに「後ろめたさ」を感じたり、人より多く金額を手にした場合に「ねたみ」を買うことを恐れるなどもあり根付きませんでした。チップの代わりとして、ホテルなどはサービス料として一定額を会社が受け取るという制度に変化してきました。ただ現在も旅館などでは「お茶代」「心づけ」として少額のお金を手渡されるお客様もあるようです。
チップ制度の今後
現在、アメリカの日本食店を中心にチップ制度をなくす動きが出てきています。多くのホテルやレストランは前述のように従業員がチップを受け取ることを前提に給与の設定がされています。ただ最低賃金が時給7ドル25セントから2014年より段階的に時給15ドルと倍以上に引き上げられることが決まり、チップをあてにした給与設定が難しくなることがひとつの要因です。またサービススタッフはチップを受け取っていますが、調理スタッフなど他のスタッフは受け取っていないことの不公平感が従来からくすぶっており、ここにきて廃止に向けた動きに加速がついているようです。時代が移りゆくなかでチップという習慣は制度疲労を起こしてきたと言えるでしょう。